それは線と共にあり

 最近は、家に帰ってきてから夕食を食べて、彫刻と格闘しています。
 彫刻を彫っている瞬間だけ、何者からも解放されるくらい集中できるのです。


 いま彫っている彫刻は、将来的にロボットの金型となるものです。
 腕。
 お腹。
 首筋。
 足首。
 間接の一つ一つ。


 中でも難しいのは、顔です。
 顔の中でも輪郭、鼻、目、口が難しい。
 その中でも一際難しいのが目の線です。


 絵を描くのと一緒で、最初は粗く線を削っていくのですが
 徐々にサッと一本で引いた綺麗な線に仕上げなければならないのです。
 これが難しい。
 本当に難しい。
 幅が均一でなかったり、やや曲がってしまったりして「線」ではなくなってしまうのです。


 「線」に見えないから、当然「目」に見えない。
 「線」に見えないから、当然「人間」に見えない。
 ルネサンス時代の芸術家たちが、人間そのものに美しさを見出した理由がわかるような気がします。


 人間って凄い。
 本気でヒューマノイドロボットを創ろうと思ったら、こんなに難しいことはありません。
 全力でぶつかっていく他、ないでしょう。