思考する言語〈上〉―「ことばの意味」から人間性に迫る

思考する言語(上) 「ことばの意味」から人間性に迫る (NHKブックス)

思考する言語(上) 「ことばの意味」から人間性に迫る (NHKブックス)



 心理言語学でお馴染み、ピンカー教授の準新作です。
 上巻では2章及び3章において、概念意味論に対する3つの代替理論の検証から始まります。


 極端なNeitivism学説*1、ラディカル語用論*2、そして言語決定論*3


 ラディカル語用論については、世の中に多義語っていっぱいありますし、魅力的な説かなぁと思いました。でも、ピンカー先生曰く
「多義語にも厳格なルールがあるんじゃね?」
「お前、The bat broke the window.を(コウモリがバットをぶん回して窓を割った)って言わねーだろ?」
とかなりお怒りです。


 さらに言語決定論に至っては、
 「また、エスキモーの雪の話ですか?」
 「また、1、2、たくさんの話ですか?あ?やんのか?」
と、これまたキレ気味です。
 個人的にも「言葉は、思考に影響を及ぼすことがある」程度のものであって、「言語が思考そのものである」とする言語決定論は、ちょっと本末転倒な気がします。哲学には、「語りえぬことには沈黙しなければならない」とする考え方もありますが、それは心的ないし基本的概念の限界ではなく、そもそも言葉は概念の一部がヒョッコリ表出したものに過ぎないだけの事だと思うのです。


 にしても、ピンカー先生の本は難しいです。言語学とか、何度読んでもワケワカメですorz

*1:言語にかかる基本的概念は生得的であるとする説。

*2:ヒトの心には、言語の意味の固定的な表像など存在しないので、したがって言語は流動的であり、文脈や自らの環境に応じて言語に意味を与えるに過ぎないとする説

*3:言語がヒトの思考を決定しているとする説