リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神
- 作者: ペッカヒマネン,リーナストーバルズ,マニュエルカステル,安原和見,山形浩生
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2001/05/26
- メディア: 単行本
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「リナックスの革命」との邦題が付けられていますが、本書はリナックスを詳述したものではなく、主にハッカー倫理について述べています。
21世紀は、コンピュータ及びインターネットの普及によって、あらゆる文化・価値観が顕在化し、従来の価値観が揺らぎつつあります。従来の価値観というのは資本主義における企業的価値観(本書ではこれを「プロテスタント的倫理」と比喩しています)であり、本書では、これからの価値観としてハッカー倫理であることが述べられています。
例えば、労働観に関しては、労働=金曜日、余暇=日曜日とするユニークな説明しています。
プロテスタント的倫理:労働こそが人間の喜びであり、人生の目的である(金曜日の重視)。余暇は労働のための充足時間にすぎず、余暇時間も合理的かつ効率化しなければならない(日曜日の金曜日化)。
ハッカー倫理:労働(金曜日)と余暇(日曜日)を線引きしない。仕事は情熱、もっといえば、創造性を発揮することに重きが置かれる。
金銭観に関しては
プロテスタント的倫理:全ての労働の目的は、金銭のためにある。
ハッカー倫理:金銭は物を買ったりする手段にすぎず、労働は金銭的報酬を主たる目的としていない。これに関連して、ハッカーの行動原理とは、創造することに情熱を傾け、その成果物を全ての人に公開・共有し、仲間から尊敬されることにある。
また、アカデミズムに関しては
プロテスタント的倫理:現在の大学。教授が知識を切り売りして、それを学生が黙して聴く。受動的態度が主体。
ハッカー倫理:プラトンのアカデメイア。学生が課題を発し、自ら解を見つけ、教師に成り代わって皆に教え、議論する。誰に言われるでもなく自分から動く、能動的態度が主体。
アカデミズムとは何か。その答えは、人によって様々なのですが、総じてプロテスタント的倫理(大学)orハッカー倫理(アカデメイア)に分けられるようです。
ハッカー倫理は、その価値観や普及に注目すべき点が多々あり、かなり面白い視野を与えてくれます。