日本思想大系15 現代日本論
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1957年2月に公表された梅棹忠夫著『文明の生態史観序説』を読みました。
これは決定的なことだが、世界を東洋と西洋に類別することがそもそもナンセンスだ。(pp.151)
そのような表示法では、世界における日本の位置表示はできないと思う。(pp.151)
そのように、当時の西洋中心の視点からは日本を捉えることの難しさを説いた後
変化は全然表面的であって、本質においては、西洋的なものは何一つ影響しなかった、という考え方もある。それはしかし強弁だ。そんなことはない、現代の日本文化は明治以前の日本文化と、明らかにちがっている。(pp.152)
と、いわゆる現代的な視点も批判するあたり、やはり鋭い。
そして、文化の要素を切り分けて文明を語る『系譜論』を破棄して、『機能論』から独自の文明論を展開するわけです。
生態論、進化論に立った独自の視点。これが面白い。
下手糞な画ですみませんが、梅棹の考え方は上図のようなものです。
仮に西欧から極東までを一つの楕円として表したとき、第1地域と第2地域に分かれる。
第1地域(斜線の地域)
・生活様式が高度に近代文明
・資本主義
・封建体制があり、ブルジョアを出した
・中緯度温帯
・実力の蓄積により第2地域からの暴力を排除
・基本的に単一民族に近い構成
・個人
・オートジェニック(自成的)なサクセッション。内部的な圧力によるもの
第2地域(大部分の空白)
・第1地域以外の生活様式
・革命→独裁者体制
・巨大な乾燥地帯
・破壊と暴力の発生、建設と破壊の繰り返し
・文明の発生源
・多民族に近い構成
・集団
・アロジェリック(他成的)なサクセッション。外部的な圧力によるもの
ここで面白いのは「一つの世界として取り扱っている」点です。「西洋文化のこの要素は、東洋文化のこの要素に由来し・・・」という系譜的な論じ方ではなく、一つの世界として各文明・各文化を捉えながらも、あくまで社会構造や生活様式が異なる点を強調しているのです。
特に、第2地域に関しては将来的に「中国ブロック」「ソ連ブロック」「インドブロック」「イスラムブロック」として並立状態になると解しているあたり、今の世界観にも通じる視点だと思いました。
なお、「近代化と西洋化」について
全体の生活様式はちゃんと日本向きのパターンにつくられていて、必ずしも西欧かしているとはいえない。(pp.155)
と論じているのですが、これは『文明の衝突』で同じ趣旨の内容が主張されてるんですよね。
50年以上昔にこんなことを論じていたなんて、本当に驚き。
(´Д`)一体どういう頭してたんですかね。