今日の芸術
今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)
- 作者: 岡本太郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1999/03/01
- メディア: 文庫
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今日の芸術は、
うまくあってはいけない。
きれいであってはならない。
ここちよくあってはならない。
(pp.98)
これは一体どういうことか。
読みすすめて行くと、その論拠が良く分かってきます。
岡本は「芸術は、生きる事そのもの」だと断言し、誰でも描いた方が良い、いや、描くべきだとも主張しています。
貴族や位階勲等のある者にのみ独占されていた芸術が、誰でも芸術に触れる事ができる現代。
美術館に行く。
街並みを歩く。
同好仲間と遊ぶ。
そうした日常に芸術が溢れている今日において、誰しもが「わからないなぁ」「こんな風に自分も描けたらなぁ」と思っている。
にもかかわらず、何故誰も芸術をしようと思わないのか。
岡本は
「うまい絵、きれいな絵、ここちよい絵など無理に描こうとするから絶望してしまう。」
「下手で結構。でたらめで結構。描くこと自体が重要だ。」
という主張なのです。
要するに、最初からきれいな絵など描けないのは当たり前だと、諭しているのです。
そして、芸術とは「新しくなければならない」「マネであってはならない」とも付け加えています。
そこには壁にぶつかっても避けることなく、自分なりの答えを導き出そうと葛藤する人生観が透けて見えます。
それでいいのです。
今だに“変なおじさん”扱いされている芸術家ですが、一度著書を読んでみることをオススメします。
驚くべきほど論理的な文章であることに驚かれる事でしょう。