今日の芸術

今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)

今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)

 今年は、岡本太郎生誕100年となります。

 

今日の芸術は、
うまくあってはいけない。
きれいであってはならない。
ここちよくあってはならない。
(pp.98)

 これは一体どういうことか。
 読みすすめて行くと、その論拠が良く分かってきます。

 
 岡本は「芸術は、生きる事そのもの」だと断言し、誰でも描いた方が良い、いや、描くべきだとも主張しています。
 貴族や位階勲等のある者にのみ独占されていた芸術が、誰でも芸術に触れる事ができる現代。
 美術館に行く。
 街並みを歩く。
 同好仲間と遊ぶ。
 そうした日常に芸術が溢れている今日において、誰しもが「わからないなぁ」「こんな風に自分も描けたらなぁ」と思っている。
 にもかかわらず、何故誰も芸術をしようと思わないのか。


 岡本は
 「うまい絵、きれいな絵、ここちよい絵など無理に描こうとするから絶望してしまう。」
 「下手で結構。でたらめで結構。描くこと自体が重要だ。」
 という主張なのです。
 要するに、最初からきれいな絵など描けないのは当たり前だと、諭しているのです。


 そして、芸術とは「新しくなければならない」「マネであってはならない」とも付け加えています。
 そこには壁にぶつかっても避けることなく、自分なりの答えを導き出そうと葛藤する人生観が透けて見えます。
 それでいいのです。


 今だに“変なおじさん”扱いされている芸術家ですが、一度著書を読んでみることをオススメします。
 驚くべきほど論理的な文章であることに驚かれる事でしょう。