父が遠出する理由

自らの行動の全て『“いつ”“どこで”“なにを”“なぜ”“どうしたか”』が
全て筒抜けになるせいである。


父が若い頃、10駅近く離れた街の呑み屋で愚痴を吐いたところ
翌日朝、祖父から「人前で内輪の恥を晒すべからず」と注意を受けたそうだ。


呑み屋の主人、店の客から祖父に密告があったのである。


それ以来、父は県を跨いで飲み食いや遊戯を楽しむようになった。


私がこの話を聞いたのはつい先日、帰省したときのことである。
父「Futaba多摩川の○○近くでオニクルミを○個拾っただろう?」
私「え?いや、確かにそうだけど・・・」
父「みっともない事をするな!」
私「そりゃそうだけど発芽させようかなぁと・・・」
父「お前の行動は全て筒抜けになっている!」
私「誰に?」
父「(人差し指で上を指す仕草で)上に、だ」


確かに、そのときはとある公園で落ちている梅を拾っていた。
※注:川原で拾った物は、石一つでも公共物なので持って帰るのは禁止です。
しかし、あの日は雨だったし人影はなかった筈だ。
Twitterに写真は載せたが、オニグルミは多数自生しているので、場所まで特定できない筈だ。
持って帰った数は、私しか知らない筈だ。


実のところ、近所から十数件、親戚から数件の報告が近縁筋へ挙がったらしい。
タワーマンションが乱立する都市で
古き良き「ご近所付き合い」が生き延びていたとは驚きである。


私が「関西で一人暮らしをする」と言ったとき、父は珍しく猛反対した。
今から思えば、私の行動を「完全に」把握できなくなることを恐れたからであろう。


さてここから先、問題になってくることは小屋暮らし先の選定である。
「親戚の農地と古屋でも借りよう」など考えていたが、とんでもない話だ。
行動が全て、ダダ漏れになる。


終の棲家も隠密に決めなければならないとは
何とも迷惑この上ない話である。