同居人とパイプと


今週は嫌な事ばかりだった。
上司と仲違いし
出世組の飲み会を恨めしがって
そんな自分勝手な自分が嫌になった。


私は、同居人に初めての「嫌がらせ」を試みた。
正確には「見当違いの腹いせ」とも言うべき行動だったが。


煙草屋の店主は、店の奥に行き
「これは初心者用ですから」
そう私に念を押して、パイプセットをくださった。


帰ってくると、同居人は怪訝な顔をしている。
私は無言でパイプを組み立てて、乱暴に煙草を詰めてマッチに火を付けた。


ひどい代物だった。


目はショボショボするし、舌は痛いし、頭がクラクラし始めてた。
なんだこれは。
おもむろにパイプを置いて、しゃがみ込んでしまった。
これは耐えられない。


「何やってんだか」
そう言って同居人は、私が吸いかけていたパイプを手にする。
灰を払って、煙草を詰める。
マッチに火をつけ一服して、さらに残り火をつける。
吸っては時折、ため息のように煙を吐く。


映画のワンシーンのように、見事なまでに“サマ”になっていた。
同居人は40分近くそのまま吸い続けていた。


「料理と一緒。誰かに教わってできるの。」
いつものトゲトゲしさのない同居人の言葉に、自らの愚かさを改めて感じた。