進歩の終焉―来るべき黄金時代

進歩の終焉―来るべき黄金時代 (1972年) (みすず科学ライブラリー〈29〉)

進歩の終焉―来るべき黄金時代 (1972年) (みすず科学ライブラリー〈29〉)

 それは、半世紀も昔のお話。


 「分子生物学
 そんな学問が成立した1960年代のお話です。
 ヒッピーブーム、フリースピーチ運動に晒された当時の研究者は、否が応でも考えたわけです。
 「この先、科学はどうなるのだろうか?」と。


 「力への意志」を示す場、「ファウスト的」な者が少なくなって、
 セントラルドグマという概念がゆるぎないものとなり
 アカデミックと化し、
 とうとう科学として終焉を迎えるその先に何があるのか?


 ステント博士の答えはこうです。

 「有限であるから、科学の進歩にも限界がでてくるだろう」
 「少数の“ファウスト的”な働き者と、その働き者が生み出したものを“レジャー”する大多数に分かれるだろう」



 2012年現在、それは現実のものになりつつあります。
 知識社会という21世紀においては、娯楽産業・情報に価値が見出され、
 ジョブズのような野心を持った少数の者が創造し、それを大多数が消費する。


 「どのような流れの中に、私はいるのか」
 そんなことを意識するだけでも、視野は広くなり、自分の糧になると私は信じております。
 先の確信を得られない“黄金時代”に、我々は生きているのですから。