私の知る川がない

 神戸には、私の知る川がない。


 多摩川のような悠々とした、
 紀ノ川のような往々とした、
 そんな川は一つもない。


 川はある。
 芦屋川など、どうだろう。
 あれは小川だ。
 風景を楽しむような、
 四季の移り変わりを楽しむような、
 そんな川だ。
 私の知る川ではない。


 多摩川の風に心踊り、
 紀ノ川の空に目を奪われる。


 神戸にあるのは山と海。
 神戸には、私の知る川がない。