エリック・ホッファー自伝―構想された真実

エリック・ホッファー自伝―構想された真実

エリック・ホッファー自伝―構想された真実


 弱者を演じる特異な役割こそが、人類に独自性を与えているのだ。われわれは、人間の運命を形作るうえで弱者が支配的な役割を果たしているという事実を、自然的本能や生命に不可欠な衝動からの逸脱としてではなく、むしろ人間が自然から離れ、それを超えていく出発点、つまり廃退ではなく、創造び新秩序の発生として見なければならないのだ。(本書、pp.67)

 “沖仲士の哲学者”として知られるエリック・ホッファーの自伝です。

 
 この本を読んで、エリック・ホッファーという人間がとても好きになりました。
 「人間とは何ぞや」という考え方、特に現代人に対する人間観に魅かれるものがあります。


 前掲の文章などはその最たるもので、近現代の社会の底辺で働く人間の力強さ、すなわち、その彼らの自己嫌悪が放出する「生存競争よりはるかに強いエネルギー」こそが人間の運命を形作る役割を果たすとの点に、私は同意せざるを得ません。


 そして、ホッファー自身が自殺未遂をした話。
 「本を読んで勉強したいのだけれども、生きるために働くだけの人生」に一度は絶望し、自殺未遂を起こした28歳のときのホッファー。
 私には知性がないので頭は良くありませんが、同年齢の人間として、その苦悩は理解できる気がします。