『無沙汰は無事の便り』
「よく眠れた?もう寝るわ」
そう言って同居人は、朝から眠りに就きました。
昨日の訃報の報に拠る私の狼狽を見るに
同居人は昨夜一睡もせず見守っていたとのことでした。
同居人に迷惑を掛けるとは、誠に情けない次第です。
昨日から不食であったため、柿を摺ってヨーグルトと一緒に食べ
その後はしばらく空を見上げておりました。
「空虚とは、こんな心情を云うのか」
そのようなことしか、頭は働きませんでした。
今日の私は、友人少なき故、その縁を固守して参りましたが
神明の成すことには敵わぬものです。
私の粗末な神戸土産を、某女史を介してお渡ししたとき
お礼として笑顔に満ちた御写真をお送りくださいました。
今一度、御写真を改めて拝見して、まだ尚、生きておられるように思えてなりません。
尤も、私より親しかった御婦人方の心中は
私のような凡夫には察しが付かぬ程のものでしょう。
慰みの言葉もかけるのも畏れ多いことです。
お便りないことを寂しいと感じることもありましたが
『無沙汰は無事の便り』とは、本当にその通りです。
本当に、その通りでした。