進化と人間行動

進化と人間行動

進化と人間行動



 『進化と人間行動』を読了。


 まず、標準社会科学モデル(SSSM)について批判し、ダーウィンの進化論に関する様々な俗説的解釈(種の保存に関するもの)を排し、読者の頭を整理させた後、社会脳仮説、適応度、血縁度と血縁淘汰、裏切り者の検知、性淘汰、配偶者防御の話に移るという分かり易さ。


 お気に入りは、第5章「ヒトの進化」の「進化適応の環境(EEA)」に関する話、第8章「協力行動の進化」の「裏切り者の検知」に関する話、そして第12章「再び遺伝と環境、学習、文化」の「非適応行動について」に関するお話です。
 進化心理学やヒトの認知行動について、進化生物学を基盤として丁寧に説明されており示唆に富みます。少なくとも、“人間を一度、生物として捕らえてみる”意味では有益な本だと思いました。


 なお、「説明が及ばず」という論点は多々登場します。例えば、ヒトの非適応行動や配偶者選択などは、社会生物学だけで解決しえる問題ではないようです(今のところ)。
 しかし、そうした研究が不十分な点をイデオロギーで片付けることなく、「まだ説明できないんだよね、ごめんね」と率直に認める著者の姿勢には好感を持ちました。


 (´Д`)大学の教養課程で読んでおくべき本だったなぁ。もっと早く出会うべき名著でした。