汝、素養在りや

 出身大学院の飲み会に参加してきました。恩師や講師を交えて、知財の雑談です。


 平成22年度の弁理士試験合格者数は756名となった一方、知財業界は“人員過剰状態”に陥っているのはご承知の通り。
 特許事務所や企業が「若干名」と募集を掛けようものなら、80人や100人の弁理士が応募してくるのが当たり前。その中でも使い物になりそうな人は、正直5人位なのだそうです。


 今の弁理士、もっと言えば弁理士試験に合格した者に足りないことは何か。その点に恩師の話が及んだとき、私は自分自身を恥かしく感じました。

1.人とコミュニケーションが取れない(コミュニケーション能力)
2.理系出身にも拘らず技術が理解できない(理解力)
3.明細書が書けない(文書作成力)



 逆を言えば、これらのうち1つでも素養があれば、他を補うことが出来るということになります。私の所属する知的財産部を見れば、1は出来なくても2と3ができる、2と3が苦手だが1はできる、そういう知財部員を多く見受けます。


 これら必須の素養は、大学院で再三忠告され続けてきました。しかしながら、私は知的財産の研究に感けて、この実務者に必須たる素養を無視し続けてきました。
 そして、企業の知的財産部に配属されて初めて、自ら墓穴を掘る羽目になった。上司や先輩社員を怒鳴りつけ、発明者から技術内容の不理解を指摘され、明細書の9割は先輩社員の書いた文章。そんな知財部員である私に、これら素養の1つでもあると云えるのか。乃至、その素養を身に着け、伸び代があると云えるのか。


 それは休職している私を見れば、良く分かることです。私はアイデアや独創性に長けていても、知財人材に必須たる素養を欠けているのです。


 帰り道、同期の方から「休職の件は、恩師に相談してみてはどうか」とアドバイスを頂きました。大変ありがたいアドバイスも頂戴しました。
 さりとて、恩師に相談する気にはなりません。
 気恥ずかしさと同時に、恩師に対して申し訳ない気持ちがするのです。過去の恩師の忠告を無視して、今頃になって言い訳がましくなった自分が心底嫌なのです。


 何と情けないことか。